かくれんぼじゃないよね。まさか、ドッキリ……な、わけもないよね。
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お巡りさんはいつまでたっても帰ってこなかった。そして、交番に設置された電話でボードに書かれた緊急の連絡先にかけても無駄だった。繋がらないどころか電話の発信音すらしない。
緊急時には一番頼りにされるべき機関である警察と接触もできないなんて……。この街にいったい何が起こってしまったというのだろう。
茜はためしに歩いて駅まで行ってみた。駅前の広場に出た途端、ラッシュ時特有のざわめきが耳に紛れ込んでくるのを期待していたのだが、見事に裏切られることとなった。
駅の周辺は不気味なほどに静まりかえっていた。完全な静寂の中で駅の建物だけが普段と変わらず存在している、そのことがますます奇妙な感覚を強くさせていた。
終電が行ってしまった深夜でさえ、もっと騒がしいだろう。朝起きた時に聞こえていた鳥の声すらもう幻聴だったのではないかと疑いたくなる。いつもなら呑気に道端を闊歩(かっぽ)しているハトの姿も見当たらなかった。
無音の世界。そう表現する以外に的確な言葉が思いつかなかった。
平日のこの時間帯ならば、上下線ともに数分刻みで到着と発進を繰り返す電車の騒音も今日は聞こえてこない。改札口に駅員の姿すらない。
なんなの? 何が起こったの? 茜は頭を抱えこんだ。
自分の部屋に見知らぬ男が立っていた、なんて出来事がなんともないくらいの事態が確かに自分の身に降りかかってきているのだ。
しかし、なぜ?
少しでも混乱する頭を落ち着けたくて、茜は靴下のまま人を探すことにした。それでも堂々と大またで歩くにはあんまりにも不気味な状況なので、物陰に隠れるようにこそこそしながら近所をうろついてみた。だが、人影は一切見当たらなかった。コンビニや郵便局も明かりはついているのだが、客はもちろん、従業員も一様に消えてしまっている。
そうこうしているうちにずいぶんと日が高くなった。もうお昼頃かもしれない。そう思うと急に空腹感がおそってくる。
こんな状況でもお腹はすくんだ、と思うと茜は無意識に苦笑いを浮かべていた。そして目じりにうっすらと涙がにじんだ。
こんな心細い思いをしたのは初めてだった。少なくとも、茜の十九年の人生は平穏そのもので、こんなに強烈な不安感と孤独感には直面してこなかった。それは幸運だったのか、不運だったのか、今にしてみるとよくわからない。
今日はやたらといい天気だった。輝く太陽を目を細めて眺めながら、これから自分がどうすべきなのか必死に頭を働かせる。
考えても考えても、茜にはたった一つの選択肢しか思いつかなかった。
帰ろう。
あの不審人物二人組みが茜に危害を加えないとも限らないが、今のまま無人の街をさまよっていてもどうしようもないことは明らかだった。
茜はゆっくりと自分のマンションの方へと足を向けた。
プチあとがき。
不安な街パート2。
優先すべきことが他にある時に、息抜きとして小説を書いていると、ものすごいスピードで書けますね(笑)そのぶん、荒削りであることは否めませんが。
もうちょっと長くするつもりだったけれど、そろそろ時間が本当になくなってきているので、このへんで。
この続きは……考えているようで考えてないので予告すらできません;
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