兎にも角にも始めちゃいました。サイは投げられたようです。

 

 男の声が頭の中に響いた。夢にしては鮮明だ。

 は? 何言っちゃってんの?

 しかし男が何を言っているのか聞き取れない。と、いうより耳慣れない単語を羅列されて話の内容が理解できない。

 それにしても夢にしてははっきりと声が聞こえる。まるですぐそばで語りかけられているようだ……。

 そこで目を開けた。カーテンの隙間から漏れる朝日がまぶしい。

 茜(あかね)はぼんやりする頭が徐々にはっきりするのを、ゆっくりとまばたきしながら待った。朝方特有の鳥がざわめく声が遠くで聞こえた。
 
「あたし、寝ぼけてるんだよね?」

 うっかり独り言なんてつぶやいてしまってから思わず破顔する。一人で何言ってるんだろう。しかしそのすぐ後に茜の顔はおもいっきりひきつった。

「そうみたいだね」
「時間はたっぷりある。目が十分に覚めるまで我々は待つことにしよう」

 見知らぬ二人の男の声が、聞こえた。現実のものであることが疑いなくわかるくらいにはっきりと。
「だっ、なっ、……」

 茜はとっさに言うべき言葉を思いつかず、意味不明なことを口走る。ついさっきまで眠っていたベッドの脇で長身の男二人組みが彼女のほうを覗き込むようにして立っていた。

 とっさに茜は身を起こして窓際に置かれたベッドの端、壁ギリギリのところまで後ずさる。

「あ、アンタたち、人の部屋に勝手に入って、何やってんの?」

「あなたが起きるのを待っていたのだが?」

 一人がさも当然、と言わんばかりに答える。不機嫌なのか、もともとそういう顔をしているのか、にらむようにして茜を見下ろしている。隣の男は黙っていたが、ヘラヘラとしまりのない笑みを茜に向けていた。

 意味がわからない。自分の置かれた状況がわからない。寝起きで頭の回転が鈍くなっていることを考慮にいれても、今の状況は突飛すぎる。

 どうしていいかまったくわからなかったが、とりあえず茜はパジャマ姿を他人に見られたくなかったので、掛け布団をあごの高さまで引き寄せた。

「不法侵入だっての。不法侵入! 出てってよ」

 二人の男の目的が不明な以上、何をされるかわからない。そんな恐怖と茜は戦いながら叫んだ。

「我々に、この部屋から出ていけ、と?」

 重低音の声が静かな口調にもかかわらず凄みの利いたものに感じられる。片方は顔だけじゃなく、声も怖い。それでも茜は精一杯の虚勢をはって動じていないフリをした。そして相手の質問に対して、全身の力を首に集中させて、力強く頷く。それから、今すぐよ、今すぐ、と小声で付け足した。

「まあ、女の子だしね〜。嫌ならしょうがないよね」

 もう一方が愛想のよい笑顔を茜にむける。それから不機嫌なほうに同意を求めるように頷きかけた。

「そうか。ならば仕方がない」

 強面のほうがしぶしぶと言った様子で頷いた。

「部屋の外で待っていることにしよう」
「着替えができたら呼んでね〜」

 そう言って二人は部屋から出て行った。笑顔のほうがドアの閉まる最後の瞬間までヒラヒラと手を振っている姿が見えた。
 パタンと静かに閉められたドアの音がやたらと鮮明に茜の耳元に木霊した。

「全然わかってない〜〜〜」

 茜は脱力してベッドに突っ伏した。

 何がなんなの? 全然わかんない。いったいアイツら誰なのよ?

 茜はあまりのワケわからなさに泣きそうになる。けれども溢れそうになる涙を懸命に我慢して、とりあえず身支度を始めた。

 

 



プチあとがき

 即興で考えてみました。即興なだけあって「画」が全然見えてきませんね。茜の髪型とか二人の男の年齢とかさっぱりわかんないと思いますが、これからつけたしていきますね。

 ははは、考えなしでやっていくので果たして急展開が期待できるのか、ダラダラと日常の繰り返しになるか未知数です。私としては複線だのオチだのを細かく考えないでいいので、書いててかなり楽しかったです♪ でも現時点で客観的に読むとまったく面白くないです。

 ホントに何も考えていないので、二人の男の正体は今から考えます。

 

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