フェアリー テイル あとがき

                                          

 こんな長い話にお付き合いいただきただ頭がさがります。  

 あまりいないとは思いますが、あとがきから読んでいる方、ここは多分にネタバレを含んでいるので読むは後にしたほうが無難ですよ。     

 じゃあ、これを書き始めたきっかけから。 ぱくったつもりはないので言いますが、小川洋子さんの「凍りついた香り」を読んでいて思いつきました。

 この主人公の恋人、すごく変なんです。ものすごく変です。数学がめちゃくちゃできて、記憶力がよくて、嗅覚が鋭敏で、スケートが上手で、すべての乗り物に乗れなくて、分類癖があって、秘密主義で、あげるとキリがないんですけど、でもやたら素敵なんです。小川作品で一番の男前だと私は思っています。  

 とにかく普通の人とは違うんだけど、それでもその人のことが好きで好きでしょうがない人がいる、って話を書きたかったんです。

 あとインスパイアされたのが「キリング・ミー・ソフトリー」って映画ですね。ぶっちゃけその作品自体は観てないんですけど、「優しく殺して」ってタイトルが頭の中で妙にひっかかっていて、「優しく殺されたい」ってどんな感覚? って考えてたらユズルの変な嗜好に繋がりました。首だけしか触れないってヤツ。

 正直、実際にあんなことされたら私だったら引きます。三メートルくらい。

 この作品、私にとって初めて資料を考慮に入れて作った小説です。まあ、たいしたことないですけど。

 で、うつ病患者は眠れないか、一日中寝てばかりいる。特に若い人は後者のパターンが多い。ということでユズルは寝てばかりいます。夢の世界の住人です。

 ところで、私の周りには創作仲間が割合いるのですが、たま〜に自作品について討論めいたことをするのですよ(場合によっては白熱した激論です) で、彼女と杉浦くんとがくっつバージョン(ホラー風味)も案としてあったのですよ。でもなんでタイトルがフェアリーテイル(おとぎ話)かというと、最後の一文を入れたかったからなのです。なので却下でした。

 ところで最後の章はいきなり杉浦くん視点だったんですけどわかりました? 私、どうも視点変換という手法が好きなようなんですが。どうも理解しづらいんじゃないかと心配です。

 あと、読者の想像にまかせる、曖昧な結末も好みのようで……。なんとなくスッキリしない方、ごめんなさい。あなたのたくましい想像力で補って好きなように解釈してください。 

 えーと、少し話が長くなりそうですが、もう少し付き合ってもらえますか? すみません……。

 実はこの「フェアリーテイル」は一度とある出版社に投稿したんですね。自費出版系ですから主に作者からお金をもらって稼ぐ会社です。が、コンテストに入賞するとその作品を出版してくれて、賞金もくれます。

 まあ、予想通りコンテストには落選しましたが、お金を出してもらってナンボの商売です。落選しても「協同出版(会社と作者がお金を出し合って出版する方式)で出しませんか〜」ってお誘いがくるんですよ。まあ、お金ないんで実行しなかったですけど、馬鹿だから私単純に喜んじゃって。私の作品を出版する価値があると思ってくれる人がいる、みたいな感じで。しばらくずっとニヤニヤしてましたね。ベタ誉めの審査コメントが添えられてましたし。

 でもその文章って明らかにおかしいんです。「月明かりの漂う夜が〜〜儚くて繊細で〜」と書かれていたんですが、そんな箇所ないです。話にでてきませんよ、そんなシーン。それに近いのは一章で「月のない夜の闇を思わせるような色濃い沈黙だった」って記述くらいですが、月ないって言ってるジャン! 自然に考えて、斜め読み? 適当なオベンチャラ? だいたい、そんなに誉めてくれるなら出版してくれればいーじゃん。

 まあ、ただ私の実力不足で落選しただけだし、月明かりがどうのだってイメージ先行で書いただけかもしれませんしね。薄暗いイメージで書いてたのでわかるっちゃわかりますよ?

 ぐちぐち言ってないで次がんばります。

 では最後に。結末まで読んでくださって本当にありがとうございました。読んでもらえることが作者の至上の喜びです。                   

  

  

 

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